ミルトン・H・エリクソン(1901〜1980)は20世紀最大の催眠療法家と評され、 彼以前と彼以後とでは、心理療法のあり方が全く変わってしまったと 位置づける人もいます。
エリクソンは18歳で当時の催眠の大家クラーク・ハルに出会い、 それ以後60年にわたって催眠の研鑽に励み、催眠のイメージを 近代的な色彩に塗り替えました。
また臨床医として、独自の催眠理論を駆使し、 それまでのカウンセリングの手法では完治しなかった重篤の患者を 短期間で改善に導き「ミスター催眠」と全米で愛称されるほどの実績を築きました。
その手法は、講演やセミナーを通じ、アーネスト・ロッシー、ジェフリー・ザイク、 リチャード・バンドラー、ジョン・グリンダーなど、 現在の米国における医療シーンをリードしている、数多くの人たちに影響を与え、 現代の心理療法そのものに、画期的で具体的な方法論で変革をもたらしました。
エリクソンの催眠法からヒントを得て、家族療法や条件付け(オペラント)療法、 神経言語プログラミング(NLP)など多くの心理療法の手法が発展しました。
エリクソン流のアプローチの特徴は「積極的介入」と「徹底した個人の尊重」にあると言われます。
それ以前は、クライアントを分析し、類型化し、それに応じた手法を行うというものでしたが、 エリクソンは、クライアントを分類せず、「個性ある一人の人間」としてコミュニケーションを はかりました。そしてクライアントの可能性を最大限に押し広げるために、積極的なアプローチ を行いました。
その方法は、一見斬新でありながら、周到にかつ緻密に練り上げられたものであったため、 ジェイ・ヘイリーは「戦略的心理療法」と名づけ、その普及につとめました。